川止めっていうのは。 [母]

 母は最近「時代劇専門チャンネル」ばかり観ています。mizumiuは家事の合間にちらちら観るだけですが、昔の時代劇だと、しゃべっている言葉の意味が分からないこともあります。

 先日、番組の名前は忘れましたが、ある宿屋に、傷を負った侍とその相棒みたいな二人が部屋を取ろうとやってきました。でも主人は「あいにく相部屋になってしまいます。なにしろ川止めですから」と言って、部屋がいっぱいだと言います。それでも一部屋貸してくれと言う侍に、主人が「川止めですから」と繰り返しました。そこで話は相部屋に通された二人が、先客の侍と一悶着ある、というふうに続いていったと思います。ちゃんと観ていないので、わかりません。

 mizumiuは話の内容よりも、宿屋の主人が「川止めですから」と繰り返したのが気になりました。お客さんがたくさんいて、相部屋にしているのは、川止めが原因らしいのは分かりますが、「川止め」ってどういこと?と、家事に忙しいmizumiuはその言葉だけが気になってしまいました。「川止めって何?」と母に聞いてみると、母は丁寧に説明してくれました。「昔は多摩川とか、向こう岸まで船で渡ったり、女や子どもは、人足で輿に担がれて川を渡ったんだけど、雨が降って、川の水が増すと、その川渡りが出来ないから、川止め。川を渡れるようになるまで、近くの宿屋で待っていたんだよ」と、動く右手を大きく動かしながら話してくれました。

 「川の水量が雨で増えて渡れないから、川止め、ね。で、渡れるようになるまで、宿屋で待っているけど、泊まれる宿屋が少ないから、相部屋になってしまって、それを主人が川止めのせいだっていうことね」とmizumiuが納得すると、母も大きく頷きました。江戸の話だから、多摩川か荒川か墨田川か、たくさん川はあると思うのですが、川崎で育った母が、「多摩川」という時のトーンは、完全に川崎の人、沖縄人的に言うと、ナイチャー口(内地、本土口調)になるのが、おもしろいなと思います。

 父方も母方も沖縄人ですが、母は、生まれ育ったのが本土で、結婚してから沖縄に住んでいるので、沖縄の方言を聞けても、自分から話すことはあまり出来ません。それに、沖縄の民謡もあまり分かりません。でも歌うことは好きで、童謡や唱歌が大好きで、よく知っています。昔の時代劇を観ていると、昔の人の生活や文化も描かれていますが、最近の時代劇とはまた違う感じが面白いなと思います。

 例えば、昔の役者さん達の身のこなしは、さまになっていてかっこいいですね。普通に着物を着ていた人も、今よりも多くいたと思うので、当たり前なのかもしれないけど、着物を着ての所作が自然で美しいなと思います。かつらも似合うと言うか、かぶってます感が、あまりありません。それに江戸弁というか、べらんめぇ調の語り口も、早口も、言い回しも、今の時代劇とは違って、新鮮で面白いです。

 あと、びっくりというか、自由だったんだなと思うのが、エンディングテーマです。激しいロック調の歌だったりするのが、初めは衝撃的でした。あれ、時代劇観ているはずだったけどな〜と、テレビを観ている母を見に行くと、江戸の町を背景に、エンディングロールとともに激しい音楽が流れていたりします。誰の曲?と思って観ていると、mizumiuは知らないカタカナやローマ字の名前が書かれてあったりします。きっとその頃のヒット曲なんでしょうね。

 「この曲、水戸黄門の曲と良く似ているね」と母が言うので、あるドラマのエンディング曲を聞いてみると、確かにベースとかメロディーとかテンポが似ていました。母も、よく聞いているなと思いました。話の筋も割と覚えていて、教えてくれることもあります。時代劇は、勧善懲悪で、ストーリーが分かりやすいのがいいのかもしれませんし、往年のスターが出てくるのも楽しいのかもしれません。

 だんだんとおとなしくなってきている母が、一生懸命話して説明しようとするのを見られるのは、時代劇のおかげです。テレビは受け身になりがちですが、話をするきっかけになるといいですね。そういえば、美人の女優さんが泣くシーンを観ている時に、「美人は泣いても美人だね」と言うと、父が同意したように、笑いました。テレビを観ながら、mizumiuの話も聞いているという証拠で、話も理解しています。そこですかさず、「お父さん、mizumiuも泣いてもきれいかね〜?」と泣くふりをしたら、あきれられました。

 こんなたわいもない会話が出来るのが、うれしいです。認知症で何にもしゃべんないと思われている父ですが、まだまだ、冗談も通じるし、おちゃめなところもあります。父と母には、アメリカのドラマより、時代劇を見せて、少しでも脳の活性化に繋がればいいなと思いました。でも観させるだけで、ほったらかしはダメで、時には質問しなくてはなりませんが。





 
 

 
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