父と同窓生たち

　父には毎月一度、高校の同窓生たちとの食事会、飲み会があります。この集まりは、父が立ち上げから携わり、40年近く幹事を務めていたもので、認知症になってほとんどしゃべらなくなっている父のことを暖かく受け入れてくれる友人たちに会える、父に取ってはデイサービス以外で唯一の社会的なつながりでもあります。

　認知症になり、発言もほとんどなく、外出も嫌がり、自分の好きな時に寝たり起きたりする父でしたが、月に一度のこの集まりには「行く！」と言って、ベットで寝ていても起きたり、素直に着替えたり、嫌がらずに車に乗ったりしてました。でもこの夏は夏バテが続いていて、デイサービスから帰るとまずはベットで一休みという生活リズムが出来てしまっていて、集まりがあるよと言っても、起き上がれない事が何度かありました。

　それで集まりを続けて２回休んだり、またはmizumiuがうっかり集まりのことを忘れてしまったりして行けないこともありました。そうしていたら、父はこの集まりのことを少しずつ忘れてきているようでした。父に取っては唯一の社会的なつながりですし、父のことをそのまま受け入れてくれる場は他にないので、mizumiuとしては父の体力の続く限り、毎回参加させたいと思っていました。でも、そろそろ、潮時かなと感じる事もありました。

　今月の集まりに参加した時、父は、集まりのことを全然知らないようで、mizumiuの誘いに素直に応じて出かけましたが、先に来ていた友人たちが声かけてくれても、あまり反応がなく、静かに食事をするだけでした。嫌がってはいないのですが、あまり楽しんでもないようでした。遅れて行ったので、もう帰ってしまった友人の方々もいて、残っていた人数が少なかったのもあり、いつもなら14〜16人いる人全員が父に声をかけてくださるのですが、今回は５、６人しかありませんでした。
　
　それに、今幹事をしている方が、「お父さんを連れてくる事は大変だから、無理しなくてもいいよ。〜さんも、〜さんも、送り迎えが大変だからって、もう集まりに行くのは止めますって奥さんから電話があったんだよ。あなたはお父さんとお母さんの世話もしているでしょ。お父さんが、集まりに行きたいって言わないなら、もう連れてこなくてもいいんじゃないかな。あなたが連れてきたいならいいけどね。大変でしょ。みんな年とってきているからね」と、言ってきたのです。

　正直、もうそろそろかなと思っていた矢先に言われたので、本当に潮時かなと感じてしまいました。来月忘年会がありますが、それを最後にしようか、それとも続けるか、考えなくてはなりません。家に帰ってから、母に、父の集まりでのことを話してみたら、「お父さんの唯一の社会的なつながりだよ。他にはないだろう」との返答でした。母は、自身が倒れるまでは、父と一緒にこの集まりに参加していたので、なるべくなら参加し続けてほしいという考えです。

　そして後日、意識のはっきりしている父を、もうベットに横になって一休みしようとしている父を寝かせないようにしながら、集まりのことを聞いてみました。すると父は、先週集まりに参加した事は忘れていましたが、集まりには参加したいかと聞くと、「うん」とうなずきました。「でもお父さん、駐車場からお店まで歩けないでしょ。車イスで行ってるんだよ。私が一緒に行かないと行けないでしょ？お父さん、娘を連れて行くって、ちょっと恥ずかしくない？」と聞くと、父は笑いながらかすれた声で「ううん。こんなに大きな娘がいるって、見せてやるから」と答えました。mizumiuも父の言葉を笑って聞くしかありませんでした。

　体力の続く限り、父に参加して欲しい気はあります。会えば同窓生の顔を思い出しますが、mizumiuが言わなかったら、集まりのことは忘れています。まったく行かなくなるのは、少し寂しいと思うし、でも、毎回、眠そうな父を起こして連れて行くのも、いいことなのかどうか、わかりません。ひとまず、来月の忘年会には、参加を予定していますが、その後のことはわかりません。

　御年80歳の大先輩方の集まりです。父のように認知症でなくても、病気になった方や、足腰が弱ってしまった方もいます。最後の３人になるまで、この集まりは続けるそうですが、一つの習慣になっていたことが、年齢や老いのせいで、続けられないのは、寂しい事だなと、父の横顔を見ながら思いました。


＜関連記事＞
父の友人
父の友人達から元気をいただく

タグ：認知症 集まり 食事 友人