君死に給うことなかれ。 [母]

 「君死に給うことなかれ」は、与謝野晶子が弟のことを詠んだ詩で、有名な反戦歌です。

 ここ最近、母は病院の図書室から借りてきた、母としての与謝野晶子の姿が描かれている短編集を一生懸命読んでおり、とても感銘を受けているようです。昨日、「本のどこかに『君死に給うことなかれ』という詩がでているから、探して!」と言ってきたのですが、どこをさがしても見つかりませんでした。短編があり、その解説が続く、という形式の本なので、詩があるかないかもすぐ分かるし、目次を見たら、それらしいタイトルもないので、「詩は載ってないよ」と言ったのですが、「あるはず!一度読んだもの」と言い張って自分で探し出すので、そのままにさせておきました。

 「君死に給うことなかれ」は確か、反戦歌で、結構長い詩だったとmizumiuは記憶していたので、ネットで探して、原文、現代仮名遣い表記、解説をコピーしてきて、今日のお見舞いの時に母に渡しました。比較的字が大きくて読みやすいサイトを選びました。病院に行ったら母は寝ていたので起こして、「はい、どうぞ。読みたかったんでしょ。『君死に給うことなかれ』持ってきたよ」と言うと、真剣に声に出して読み始めました。

 「こんなに長かったけ」と言いながら読み進め、「与謝野晶子はすごい人だな。今の時代にも通用する反戦歌を、あの時代に書いたんだよ。すごいな〜」と感銘していました。「解説も読んでよ」とmizumiuが言うと、「意味はもう知っているよ」と言うので、「いいじゃん、せっかくだから読んで。結構ていねいに説明してあるよ」と言うと、また真剣な顔で読んでいました。

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 「与謝野晶子はすごいな〜。あの時代に、フランスへ、子どもを連れて、それも自分のお金で行ったんだよ。でも残してきた下の子どもが気になって、途中で帰ってきたんだって。与謝野鉄幹とは、・・・」といろいろと話始めました。文学少女だった母は、本を読んで得た知識や感じたことを、ていねいに語って、また最後には、「与謝野晶子はすごい人だったんだな〜」と深く感じ入っていました。

 母は脳内出血で倒れてからは、集中力が続かず、あちこちに注意が飛んでしまうようになりましたが、このように集中して本を読んでいるのを見ると、「あ〜、いいな〜。まだ本が読めるって、本当にいいな〜」と思いました。自発性も乏しくなっていて、自分から「何々したい!」と言うことも減っています。家に居る時は、テレビを観てばかりなのですが、テレビのような受け身ではなくて、「自分から本を読みたい!」という姿勢でいるのが、本当にいいな〜と思います。

 「与謝野晶子って、すごい人だな〜。本も何回も読んだよ」、「じゃ、詩も何度も読んで!暗記するくらい」という会話もできて、mizumiuはとても幸せな気持ちになりました。介護を必要とする高齢者が、自らの意思で、なにかしら行動を起こすことって、とても大切な意味を持っていると思います。それが読書のような行為であれば、まわりは笑顔でいられますが、少し前の父のように、「オレ、帰るよ」と言って出て行ってしまう、いわゆる徘徊になると、状況は一変しますが、それもやはり、父にとってはとても大切な事だったと思います。

 徘徊の原因はよくわかりませんが、何かで読んだか、テレビで観たかおぼえてませんが、徘徊は、「死にゆく脳細胞が、最後の力を振り絞って、身体に動けと命令して、脳を死なさないようにしている」という説もあるそうです。それがmizumiuの頭には残っていて、父が出かけようとした時は、可能な限り、歩かせるようにしてました。徘徊されると、介護する立場は本当に大変な思いをします。でも、何かしら、自分から動いている時は、なるべく好きなようにさせてやりたいな〜というのが、mizumiuの介護方針です。

 だからと言って、いつもやさしく笑顔でいられる訳ではありません。父や母に好きなようにさせるのと同じように、mizumiuも、怒りや疲れや謝ることなど、わりと素直にストレートに出しています。口はキツいですが、出せば後に残らないタイプなので、mizumiuが爆発しても父と母は平気です。そういう意味で、父と母とmizumiuは対等だと思います。と言うか、mizumiuが、父と母の前では素でいられるのでしょう。与謝野晶子の話からだいぶそれましたが、いくつになっても好きなこと、やりたいことをするって、本当に大事だなと思います。mizumiu自身は介護でやれないことも多いのですが、それでも、なにか自分のために動けていると、少しだけ介護負担が減ります。これは事実です。


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