私、認知症になったかもしれない…。 [母]

 先日お見舞いに行った時のこと、いつになく沈んでいる感じの母が、小さな声で言いました。

「私、認知症になったかもしれない」
「どうしてそう思うの?」
「あそこに、とてもきれいな人がいるだろう?」
「どこ?」
「あっ、今はいないね」
「で、その人がどうしたの?」
「その人がさ、私のこと覚えている?って聞いたんだよ。でも、どこで会った人か出て来なくて、一生懸命考えているけど、分からないんだ」
「その人はお母さんのこと、知っているの?」
「知っているみたいなんだ。だから覚えている?って聞いて来た」
「お母さんが声かけたの?」
「会釈しちゃったんだよ。そばを通る時に」
「知っているから挨拶したのではなくて、礼儀として挨拶したんだね。うん、それはいいことだ」
「で、その人が、私のこと覚えている?って…」
「どこかで会った人なの?」
「ん…。たぶん、あの、前にいたとこ、ここじゃなくて、前に私がいたところで会ったんだと思うんだ」
「どこ?」
「牧港のところから入っていくところ」
「(母の通ったことのあるデイサービスをいくつかあげてみる)」


 母がそこで会ったと思うデイサービスには、短期間しか通っていなかったので、そこで会った人なら記憶も少ないはずです。それに、他にも3、4のデイサービスやデイケアに通っていましたが、そこで会った人ではないことを母は知っています。それだけ分かっていたら、認知症の症状ではないと思うのですが、思い出せないことで深く沈んで元気をなくしている母でした。

 母の様子を見ていると、おそらく、ど忘れしているだけだと思います。高齢だからそうなるかもしれませんが、年齢に関係なく、記憶がすっぽりなくなることだってあるし、もしかしたら、「私のこと覚えている?」と言った女性の方が、記憶を間違えている可能性だってあります。

 しかし意気消沈している母は、大好きな百人一首をやっても、反応がすこぶる遅くて、mizumiuは何度も下の句を詠んで、また上の句から詠み直して、を繰り返しました。左半分無視する傾向も強くて、そこにある札を見ていませんでした。母が本当に認知症になったのかどうかは分かりません。しかし、いつもより時間はかかりましたが、並べた札はすべて取ることができました。

「お母さん、mizumiuだってど忘れすることあるよ。人の名前なんか覚えないし。その年でそこまで人の顔と名前が一致する方が逆にすごいと思うけど。だから認知症とは言わないんじゃないのかな」
「…」

 母にしてみれば、少しずつ、自分が老いていくのを実感する出来事だったのでしょう。施設の中で毎日単調な生活をしていれば、刺激がないから、脳が活発に動くこともないだろうし、以前会ったことのある人でも、似たような服装をして車椅子に座っていたら、前の記憶と繋がることも難しいかもしれません。心配しなくて良いんじゃないのと言いましたが、その日はずっと元気のない母でした。
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